マンション購入で相続税対策できる理由とメリット・デメリット

2022.02.21
多額の金融資産をお持ちの方にとって、将来やってくる相続税は悩みの種かと思います。できるだけ多くの資産を残すためさまざまな情報を収集されていることでしょう。
そこで「マンション購入は相続税対策になる」という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。今回は「マンション購入による相続税対策」についてご紹介していきます。

相続税の節税対策は不動産がおすすめ

相続税は各財産の相続税評価額の合計額を基に算出します。したがって、相続税評価額が低くなるほど相続税は安くなります。
現金や預金は「額面が1億円」であれば「相続税評価額も1億円」となります。一方、土地は路線価方式または倍率方式により評価を行い、路線価方式の場合は「路線価×補正率×地積」により計算されます。
なお、この路線価は売買価格の目安とされる公示価格の約8割といわれています。また、家屋は「固定資産税評価額×1.0」で評価しますが、固定資産税評価額は時価の約7割といわれています。(マンションは土地と家屋を分けて評価します。)

【土地の評価(路線価方式)】
路線価×補正率×地積
※路線価は公示価格の約8割

【家屋の評価】
固定資産税評価額×1.0
※固定資産税評価額は時価の約7割
上記から分かるように不動産の相続税評価額は、多くの場合、時価よりも低い金額となります。仮に不動産の相続税評価額が6,000万円であった場合、現金で1億円を保有しているよりも、4,000万円分相続税評価額(結果、遺産総額)を下げることができますので、相続税の節税につながると考えられます。(不動産の購入に際し、不動産取得税等の税金がかかります。)

不動産の節税対策でマンション購入が良い理由

土地部分は敷地権を乗じて計算する

マンションの土地部分(敷地部分)の相続税評価額は、マンションの敷地全体の評価額に持ち分(敷地権割合)を乗じた金額となります。そのため、戸数の多いマンションであれば一戸当たりの持ち分(敷地権割合)も小さくなり、土地の相続税評価額は低くなります。
マンション購入が相続税対策になる最大のポイントは、この土地の相続税評価額が低くなることでしょう。

土地の相続税評価額のイメージ
【戸建て】
30万円(路線価)×150㎡=4,500万円
【マンション】
50万円(路線価)×1,000㎡×500/10,000(敷地権割合)=2,500万円
※戸数が多いほど持分(敷地権割合)は小さくなる

賃貸に出すと相続税評価額が低くなる

賃貸マンションとしている場合、ご自身でお部屋を使用している場合(自用)に比べて相続税評価額が低くなります。

【土地(貸家建付地)の相続税評価額】
自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借地権割合は60%から80%の地域が多く、借家権割合は一律30%となっています。
例えば借地権割合が70%であった場合、賃貸マンションの土地の評価額は自用の場合の79%となります。

【家屋(貸家)の相続税評価額】
固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
借家権割合は一律30%のため、賃貸マンションの家屋部分の評価額は自用の場合の70%となります。

小規模宅地等の減額の特例の適用対象になる

マンションであっても「小規模宅地等の減額の特例」の適用対象となります。
ご自宅としての利用であれば一定の要件を満たした場合、土地の評価額に対して330㎡まで80%の減額を受けることが可能です。また、賃貸マンションであれば一定の要件を満たした場合、土地の評価額に対して200㎡まで50%の減額を受けることができます。

マンション購入で節税対策するメリット

マンション購入による相続税の節税対策についてご説明しましたが、他にはどのようなメリットがあるでしょうか。

収益を得られる

賃貸マンションとしている場合、当然、家賃収入を得ることができます。人生100年時代、老後資金に2,000万円の貯え(たくわえ)が必要といわれています。こうした世の中において、年金以外に安定した収入があればお金の不安を少しでも軽減できるかもしれません。

所得税の節税

賃貸マンションとしている場合、固定資産税や損害保険料、減価償却費などさまざまな費用を必要経費として計上することができます。「不動産所得=総収入金額-必要経費」のため、必要経費が大きくなるほど所得税を軽減することが可能です。
また、サラリーマンなど本業が別にある場合、不動産所得がマイナスであれば給与所得のプラスと損益を通算し、所得税を減らすことができます。

借入金は債務計上できる

金融機関からの借り入れによりマンションを購入した場合、その借入金は相続税の計算上マイナスの財産(債務控除)となり、相続税評価額の合計額が減少するため相続税を減らすことが可能です。また借入金利子は、所得税の計算上、必要経費に計上することができます。

節税効果があるのは新築?中古マンション?

それでは実際に効果があるのは、新築と中古のどちらでしょうか。もちろんどちらにもメリット・デメリットがあります。

新築マンションのメリット・デメリット

新築マンションのメリットは、なんといっても全てが新しいことです。居室以外の共有部分や構造部分においても最新というのは大きな安心材料となり、安心は住宅における大きな価値となります。賃貸マンションとしている場合、中古マンションよりも空室は出にくいでしょう。また、新築マンションは住宅ローンを貸し出す金融機関や火災保険を提供する保険会社からの評価が高いため、中古マンションよりも好条件のローンや保険料の優遇が期待できます。
しかし、新築マンションには最新という大きなメリットがある代わりに値段が高いというデメリットもあります。中古マンションの相場や市場動向をチェックし、新築を買う価値があるのか十分に検討する必要があるでしょう。新築という状態は一度きりで唯一無二の付加価値がありますが、この付加価値は中古になった途端になくなってしまいます。一般的にマンションは毎年2%ずつ価値が下落するといわれていますが、新築から中古になることの下落率は10%から20%ともいわれます。

中古マンションのメリット・デメリット

中古マンションのメリットは、新築に比べて値段が安いことです。購入費用を抑えられるため、賃貸マンションとする場合には新築マンションを貸し出すよりも利回りがよくなるかもしれません。また、新築から中古になった途端に資産価値が大きく下がることを述べましたが、中古マンションの場合には価値の下落は緩やかなため資産価値を維持しやすいでしょう。
一方、新築マンションよりも値段が安い中古マンションですが、耐震度や強度など状況によっては修繕やリフォームが必要となります。また、中古マンションの場合、住宅ローン控除の適用要件を満たしていない場合もあるので注意が必要です。

相続税対策ではどちらが適している?

マンションの相続税評価は土地と家屋に分けて行います。土地については路線価(もしくは固定資産税評価額)を基に計算されるため、相続税評価額が高くなるかどうかは立地の問題となり、新築か中古は特に関係ありません。
家屋については固定資産税評価額により相続税評価額が決まるため、築年数が経過した中古マンションの方が相続税評価額は低くなりやすいでしょう。

マンション購入の節税対策で注意すべきこと

相続税の納税資金不足

自己資金でマンションを購入する場合、相続税の納税資金が不足しないように注意が必要です。相続税評価額を低くして納税額を軽減できたとしても、納税資金が足りない状態は避けましょう。

遺産分割でもめる原因になり得る

遺産分割において、1億円の現金を分割することは難しくないですが、1億円で購入したマンションを分割することは容易ではありません。将来、誰が引き継ぐのかを事前に話し合っておいた方がよいでしょう。

所得税や住民税が増える

賃貸マンションの購入により相続税は減少できますが、不動産所得がプラスの場合、所得税や住民税が増加します。また、毎年の所得税の確定申告が必要になることも認識しておきましょう。

不動産投資リスク

賃貸マンションとして利用する場合、空室リスクがあります。空室になると収支がマイナスになり、相続税評価額を算出する際、自用評価となることや貸家として小規模宅地等の減額の特例を使えない場合もあります。 また、「賃貸経営がうまくいかない場合や、現金が急に必要になったら売却すればいい」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、市場動向によっては必ずしも売却できるとは限らず、売却できたとしても希望の価格に届かないということもあり得ます。マンション購入はメリットとリスクをよく理解して検討しましょう。

タワーマンション節税の規制強化

タワーマンションは、戸数が多く高層階ほど物件価格(時価)が高いという特徴があります。そのため、一戸当たりの敷地権割合が小さく、かつ、面積に応じて固定資産税評価額が設定されていたため、高層階ほど節税効果が高くなっていました。しかし、この節税について規制が進んでおり、2018年1月1日以降に引き渡しをされたタワーマンションについては、上層階ほど固定資産税が上がる方式に変更されました。 また、タワーマンション節税による露骨な相続税対策について、国税庁がチェックを強めています。相続発生直前にタワーマンションを購入し、直後に売却したことが租税回避行為として国税庁に否認されるケースがありました。タワーマンションの購入にあたっては、「購入~相続発生~売却の流れ」が不自然にならないようにしなければなりません。

マンションの相続対策に関するよくある質問

マンションは誰の名義で購入すべきでしょうか?

実態に即してご本人名義で購入されるのがよいでしょう。 例えば、マンションの購入費用を父が捻出し、名義は子となっていた場合があったとします。父の相続の際、そのマンションについては財産計上しなくてよいように見えますが、「父が購入費用を出している=マンションの本当の所有者は父である」と判断され財産計上が必要になる場合があります。また、そのマンションは子の財産であると主張する場合には、マンション購入時に父から子への贈与があったこととなるので、贈与税の対象となってしまいます。


法人名義のマンション購入でも節税可能でしょうか?

法人名義での賃貸用マンションの購入は相続税対策となることがあります。 将来相続が発生したときは会社の事業を承継するという形になりますが、マンションは会社の財産であるため、被相続人の相続財産として計上する必要はありません。ただし、被相続人が保有している法人の株式は相続財産となるので注意しましょう。


相続の申告後、すぐにマンションを売却しても問題ないでしょうか?

申告後すぐに売却をすると小規模宅地等の減額の特例の適用を受けることができない場合があります。ご自宅の減額の特例(特定居住用宅地等)であれば申告期限まで所有および居住する必要があります。(配偶者が取得する場合を除く) また、賃貸マンションの減額の特例(貸付事業用宅地等)であっても申告期限まで貸付および所有する必要があります。 タワーマンション節税でも述べましたが、相続開始直前に購入し、直後に売却をすると租税回避行為と判断される可能性もあるので注意しましょう。

まとめ

今回は「マンション購入による相続税対策」についてご紹介しました。多額の預金を保有されるよりも不動産、特にマンションに資産を変更された方が有利であることをお分かりいただけたかと思います。不動産購入には当然リスクも伴いますので、専門家に相談しながらしっかりシミュレーションを行い、少しでも多く財産を残すことができるようご検討いただければと思います。

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