押さえておきたい!相続税申告における土地評価の減額要素をご紹介~Part1~

2021.02.25

はじめに

相続税の申告業務において、土地の評価額を下げられるかどうかというのは、非常に重要なポイントとなります。ひとくちに土地と言っても、周辺環境などによって、その土地の利用価値や経済的価値には大きな差があります。そのため、土地の評価には様々な減額要素があるのです。今回は、宅地の減額要素のうち、4つを簡単にご紹介させていただきます。

セットバックを必要とする宅地

評価減の概要

建築基準法では、防災の観点から、消防車等の大きな車が通れるように、建物の敷地は原則幅員4m以上の道路に接していなければならないと定められています。
しかし、この法令の制定より前に建てられた家は、その基準を満たしていないこともあります。現状はそれでも問題ありませんが、今度建て替える際には、土地を後退させて建てる必要があります。 この、土地を後退させることをセットバックといいます。

セットバックした部分は、道路とみなされるわけですから、そこに建物を建てることが出来ず、利用価値がなくなってしまいます。そのため、財産価値が下がり、相続税評価の際には、相続税評価額総額から評価地積のうちセットバック部分の地積に係る評価額の70%相当額が減額されると定められているのです。

評価方法

セットバックを必要とする宅地の評価は以下の算式に基づいて行います。

どうやって調べるの?

評価対象地がセットバックを必要とする宅地どうかは、現地で実際に道路の幅を測ってみる、または役所の建築課や建築指導課(名称は役所により異なります)の窓口にて確認出来ます。

セットバックが必要となった場合
  1. 道路の反対側が宅地 →道路の中心線から2メートル境界線を下げる必要があります。 この際、反対側の建物がセットバックしているかによって中心線の位置が変わるので、そちらも併せて確認が必要です。
  2. 道路の反対側が海や川、路線等 →海や川、路線は、それ以上境界線を下げることが出来ないため、反対側の境界線から4メートルのところまでこちらが境界線を下げる必要があります。
セットバックを必要とする宅地となっていたとしても、すでにセットバックが済んでいる場合もあります。その場合、評価減の対象にはならないのできちんと役所に確認することが大切です。

都市計画道路予定地区域内にある宅地

評価減の概要

都市計画道路の予定地となった場合は、その土地の利用について制限が設けられます。予定地内で建築物を建築(新築・増改築等)する場合は、原則として都道府県知事の許可が必要となります。

「2階以下でかつ地階を有しない」「主要構造部が木造、鉄骨造等でかつ、容易に移転・除却できる」といった要件を満たす場合に限り許可が下りますが、本来高層の建築物を建てられるような土地にこのような利用制限がかかってしまうことになります。
そこで、都市計画道路予定地区域内にある宅地は、評価減の対象となっているのです。

評価方法

都市計画道路予定地区域内にある宅地の評価は、以下の算式に基づいて行います。
自用地としての価額×地区、容積率、地積割合に応じて
定められた補正率

役所での確認が重要!

都市計画道路の予定については、各自治体の都市計画課(※自治体によってはインターネット上でも資料の閲覧が可能)などで資料を入手することができます。都市計画道路予定地は、実際に現地に行ってもわからないことが多いため、きちんと役所の資料を確認することが必要です。

区分地上権が設定されている土地

評価減の概要

区分地上権とは、他人の土地の地下や空間の一部等範囲を限定して工作物を所有するために設定された地上権のことを指します。
具体的には、鉄道や高速道路などが地下を通っている場合の、その通っている空間部分についての権利です。
これらの権利が存する土地は、建物の建築が制限されてしまうので、その制限の度合いに応じて土地の価値が下がり、評価減の対象となります。

ちなみに、特別高圧架空電線の架設や高圧ガス導管の敷設等を目的とした地役権も「区分地上権に準ずる地役権」として、この権利が存する土地も評価減の対象となります。

評価方法

区分地上権の目的となっている宅地の評価は、以下の算式に基づいて行われます。
区分地上権の目的となっている宅地の自用地としての価額
-区分地上権の価額

※区分地上権の価額
→区分地上権の目的となっている宅地の自用地としての価額×区分地上権の割合

資料だけではわからないことも

地下鉄のトンネルなどを目的とする区分地上権は、登記されていることが多く、法務局で取得可能な登記簿謄本や公図といった資料で確認することが出来ます。
一方、区分地上権に準ずる地役権は登記されている場合とされていない場合がありますので、現地に足を運んで上空を見渡して確認することが必要となります。

利用価値の著しく低下している宅地

評価減の概要

以下の4つのような、その利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、利用価値が低下していると認められる部分の面積分の価額の10%を控除した金額によって評価することが出来ます。
  1. 道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
  2. 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
  3. 震動の甚だしい宅地
  4. から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み(墓地など)等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

評価方法

利用価値の著しく低下している宅地の評価は、以下の算式に基づいて行われます。
自用地としての価額-利用価値の著しく低下している宅地の
地積部分の価額×10%

注意!適用には要件がある

特に1.について注意が必要となってくるのが、「付近にある宅地と比べて高低差があれば必ず10%の評価減が適用できるわけではない」ということです。
あくまでも評価対象の宅地が付近の一般的な宅地と比べて著しく利用価値が低下し、経済的価値も低いということが要件となります。

また、これは1.から4.すべてに関して当てはまることですが、利用価値が著しく低下している宅地であっても、その相続税評価の基となる路線価または倍率が、利用価値が著しく低下している状況を既に考慮して付されている場合には、10%評価減は認められませんので注意が必要です。

まとめ

以上のように、今回は、土地の評価をする際に使うことのできる4つの減額要素について簡単にご紹介させていただきました。土地の評価は複雑で、今回ご紹介しきれなかった細かい適用要件やポイントも沢山あります。一般の方が見逃してしまうような減額要素も、我々専門家はきちんと調査した上で、正しく適用することが出来ます。相続税を必要以上に納めてしまうことを防ぐためにも、是非一度、我々税理士法人NCPにご相談ください。

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