アパート経営が相続税対策におすすめの理由!節税の仕組みやメリット・デメリットを解説
2026.01.20賃貸アパートを所有していると相続税対策になるといった話を聞いたことがあるでしょうか。相続税対策の王道といえば生前贈与や生命保険の活用がよく挙げられますが、不動産、特にアパートの購入も節税対策に大きく貢献する手段の一つです。目的はすべて同じ、課税遺産の圧縮です。ではなぜアパートを建てると相続税対策になるのでしょうか。
相続税対策は「いかにして相続税評価額を下げるか」がポイントです。
不動産の相続税評価額が大きく下がれば、全体の相続財産の評価額を下げることができるため、効果的な相続税対策を行えるようになります。
なぜ相続税対策にアパート経営がおすすめなのか
平成25年度税制改正により、相続税法が改正されました。
改正前:5000万円+1000万円×法定相続人の数
改正後:3000万円+600万円×法定相続人の数
基礎控除額の減少により、相続税の課税対象者が拡大しました。
一般家庭でも土地があるだけで相続税が発生するケースが増加傾向にあることはもちろん、遺された財産のほとんどが不動産という場合も多く、基礎控除額の減少以前と比較して多額の相続税が発生する家庭も増えています。
このような理由から相続税対策が重要視され、その方法の一つとして「アパート経営」が注目されています。
不動産の相続税評価額は現金で持っているよりも低くなるので、節税対策になります。
その理由を、例を用いて説明します。
現金1億円とアパート(不動産)1億円を比較した場合
現金1億円の資産の場合は1億円がそのまま相続税評価額となります。 アパート1億円の場合は以下の計算式です。
この例に基づくと、現金と比べてアパートの方が「5,100万円分」財産が少なくなっていることになり、節税となります。
では、次の見出しで計算方法を見ていきましょう。
アパート経営で相続税評価額を抑える仕組み
上記の事例を用いて「アパート経営で相続税評価額を抑える仕組み」について解説します。
以下の3点が主な仕組みです。
- 不動産は時価よりも相続税評価額が低い
- 貸家建付地・貸家の評価減
- 小規模宅地等の特例の適用
それぞれ3つの仕組みを詳しく解説していきます。
不動産は時価よりも相続税評価額が低い
相続税の計算をする際には土地や建物は時価(売買金額)ではなく、相続税評価額という別の基準で金額の算出をします。土地は時価の8割程度、建物は6~7割程度が相続税評価額の目安とされており、現金や預金で財産を保有しているよりも、不動産を保有していた方が相続税の計算の際には有利になります。
貸家建付地・貸家の評価減
土地・建物ともに自宅や空き家になっているよりも、他人に貸している方が相続税評価額は減少します。
【貸家建付地の定義】
貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地、例えば、その宅地を所有する人が建築したアパートやビルなどを他の人に貸し付けている場合の、その敷地である宅地をいいます。つまり、自身の土地の上に自身のアパートが建っている場合には、貸家建付地としての評価ができることになります。
【評価の計算式】
具体的な計算例は下記の通りです。
【貸家建付地の相続税評価額】
例)「1億円の土地を相続した場合」
評価額は1億円、借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合90%の場合
→1億円×(1-0.6(借地権割合)×0.3(借家権割合)×0.9(賃貸割合)=8,380万円
【建物の相続税評価額】
例)「固定資産税評価額1億円の土地を相続した場合」
評価額は1億円、借地権割合が60%、賃貸割合100%の場合
→1億円×(1-借家権割合 0.3×賃貸割合 1.0)=7,300万円
例に基づくと、自用地(自分で利用している土地)と比べて、どちらも相続税評価額を抑えることができます。
小規模宅地等の特例の適用
ある一定の要件(注)を満たすと、アパートの利用目的となっている土地の相続税評価額について、土地の相続税評価額を50%減額できるという「小規模宅地等の特例」が適用できるケースがあります。(限度面積は200㎡まで)
小規模宅地等の特例について詳しくはこちら
関連記事:「小規模宅地等の特例とは?土地の相続税が減額される適用条件を解説」
(注)一定の要件とは
1. 宅地に関する要件
- 貸付事業に使用されていた宅地:被相続人等が不動産の貸付事業を行っていた宅地である必要があります。
- 相続開始前3年以内の取得でないこと(3年縛り):相続開始前3年以内に新規に貸付事業を始めた場合宅地は、原則として特例の対象外です。
2. 被相続人に関する要件
- 貸付事業を行っていたこと:相続開始の直前において、貸付事業(不動産賃貸業)を行っていた必要があります。
3. 相続人に関する要件
- 貸付事業を引き継ぐこと:その宅地を相続した人が、相続税の申告期限まで引き続き貸付事業を営んでいる必要があります。
- 所有継続:相続税の申告期限まで、その宅地を所有し続けている必要があります。
アパート経営で相続税対策をするメリット
アパート経営で相続税対策をするメリットは以下の通りです。
相続税を軽減できる
上述の通り、アパート経営は土地・建物の相続税評価額を引き下げる効果があり、相続税を軽減できることが最大のメリットであるといえます。
安定的な収益を期待できる
アパート経営による家賃収入は、継続的な収益となり、老後の生活費の確保や、相続税の納税資金に充てることができます。
アパート経営におけるリスク・デメリット
相続税対策に効果的なアパート経営ですが、さまざまなリスク・デメリットが考えられるため慎重に検討する必要があります。
空室が発生する可能性がある
人口減少や都市部への集中などにより、特に郊外ではアパートの空室率が上昇する傾向にあります。空室が増えると家賃収入の減少の他に、賃貸割合が減少することにより、相続税評価額の減少効果も薄まります。
経年劣化によるコスト増
アパート経営には、固定資産税・都市計画税、管理委託料、修繕費、火災保険料などの継続的な支出が発生します。築年数が経過すると、修繕や設備交換などで予想外の出費が発生するリスクもあります。
遺産分割が難航する場合がある
不動産は分割しにくいため、相続時に争いが起こるケースがあります。例えば相続人の中にアパート経営を引き継ぎたい人と、現金で公平に受け取りたい人がいる場合、意見が対立する可能性があります。またアパート以外の財産(預金など)が少ない場合、アパートを特定の相続人が単独で相続すると、公平な分割が難しくなります。
共有名義にすることは可能ですが、将来的に売却や大規模修繕が必要になった際、共有者全員の同意が原則必要になります。意見の対立があると、資産の有効活用や処分が困難になります。
評価額が変動するリスク
不動産価格は常に一定ではなく、相続発生時に地価が大きく下落している可能性もあります。評価額が下がれば相続税も下がりますが、それ以上に資産価値そのものが目減りしてしまうことになります。
税制改正のリスク
現在の相続税法に基づいて節税効果が出ていますが、将来的に税制が改正され、不動産の評価方法や特例の要件が見直されるリスクもあります。
アパート経営で失敗しないための注意点
ここからは、アパート経営で失敗しないための注意点や進め方も確認していきましょう。
特例が適用できないケースや税負担の可能性を確認する
アパート経営をすることによって所得が増えるため、所得に比例して、所得税や住民税の税額も増えることになります。他に、社会保険料や年金保険料等も所得金額によって納める金額が変わるので、注意が必要です。
将来的な相続税が安くなったとしても、毎年の所得税や住民税がそれ以上に増えてしまっては節税にはなりませんので、総合的な検討が必要になります。
資金計画を立てる
アパート経営は、相続税対策に有効であり、長期的な収入を得ることができますが、入居者の確保や建物本体の工事費用の他に、外構などの付帯工事、各種申請手続き費用、税金など修繕・維持管理費などが必要となります。
建築費用は、建物の構造や工法、設備のグレード、規模、敷地条件などによって変わってきますので、資金計画を立てる際には注意しましょう。
また、節税のみでなく収益が見込めるかを考えて経営ができるように検討しましょう。
専門家に相談する
アパート経営はメリット・デメリットがありますが、これまで説明してきたように、相続税評価額がかなり低くなることや家賃収入も得られるなど相続税対策には効果的です。
相続税対策で何から始めれば良いかわからない場合などは、専門の税理士に相談するのがおすすめです。
【2026年度】税制改正大綱での変更点や影響は?
令和8年度税制改正において、上述してきたアパート経営による相続税対策に影響を及ぼす、貸付不動産の評価方法の見直しが検討されています。
税制改正のポイント
被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
(注)上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができる。
(注)上記の改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用する。ただし、当該改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用しない。
税制改正による影響
取得又は新築後5年を経過する前に開始した相続においては、アパート及びその敷地は通常の取引価額に相当する金額によって評価されるため、上述した節税の効果が得られない可能性がございます。
アパートの相続税対策に関するよくある質問
アパートは誰の名義で購入するべきでしょうか?
アパートの名義は費用を支払った人の名義になるので、費用を支払っていない人の名義にすることはできません。また、よくあるケースとして「父が購入し名義も父となっているが、家賃収入については妻や子の口座に入金している」ということがあります。贈与と認定される場合は、妻や子の口座に入った1年間の収入金額が110万円以上であると、贈与税申告と納税の義務が生じることがあるので注意しましょう。
アパートにどれくらいの金額を投資すれば良いですか?
節税することばかりに気を取られて、手許のお金を使いすぎてしまうと、生活費や医療費、介護費、子供の教育費に充てる資金が無くなってしまいます。「どれくらいの金額を投資するか?」というよりも、今後の賃貸収入として見込まれる金額や借入をして建てる際の借入返済金額などを逆算して考え「どれくらいの金額なら、投資できるか?」を考えると良いでしょう。
相続人が複数いる場合、注意するべきことはありますか?
原則として、相続開始日から分割協議確定の間は、共有財産となるため、法定相続分での確定申告が必要です。
また、遺産分割の結果、貸家を共有で相続する場合でも、入居者は代表口座に家賃を支払うため、家賃も共有相続の持分割合に応じて精算が必要になるため注意しましょう。当然、確定申告も個々に行う必要がございます。
まとめ
今回は、相続税対策でアパート経営がおすすめされる理由についてご説明しました。アパート経営はまさに節税対策の王道とも言えます。
その一方で、節税だけではなくリスクやデメリットも多々あります。実際に資金を投じてアパート経営を検討される場合には、具体的なシミュレーションが欠かせません。その際には相続税対策の試算に慣れている専門の税理士に相談することをおすすめいたします。
相続専門の税理士法人NCPでは、相続対策に精通した税理士が在籍しており、ノウハウがございますのでぜひ一度ご相談ください。











