相続不動産売却時にかかる税金と3つの特別控除と時価申告の節税対策
2022.07.27
相続した不動産の売却を考えている方や相続した不動産の税金が気になっている方は多いでしょう。不動産を相続する際、相続した不動産を売却する際、当たり前ですが税金がかかります。今回は、相続不動産の売却に関するさまざまな税金について解説します。
控除や特例の制度、確定申告が必要なケースについてもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
対象となるのは「課税文書」と呼ばれる書類で、具体例としては「売買契約書」や「工事契約の請負書」「領収書」などが該当します。
課税文書の種類によって納める印紙税が異なりますが、不動産売買に関わる税額は以下のとおりです。
参照:国税庁「印紙税額の一覧表」から一部抜粋
登録免許税の税率については、以下のとおりです。
課税の基準となるものは「不動産の価額(固定資産税評価額)」となり、ここに上記の税率を掛けて登録免許税を算出します。
参照:国税庁「登録免許税の税額表」
不動産を売却した際に利益が出た場合、個人の所得の1つと見なされるため、翌年の住民税の金額に影響を与えます。
住民税には「所得割」と「均等割」の2つの算出方法があり、所得割の税率は一律で10%、均等割は市区町村民税が3,500円・道府県民税・都民税が1,500円です(令和5年までの間、それぞれ500円が加算されています)。
住民税と同様に、前年度の1月1日~12月31日までの所得を基準として算出します。不動産売却をした際の利益が出た場合は、税額算出の根拠となる「基準所得税額」に課税され、税率は「基準所得税額×2.1%」です。
つまり、売却しても利益が残らなかったり、赤字になったりした場合、確定申告は不要です。譲渡所得税の計算をする際には、その建物や土地の所有期間の長さによって税率が変わります。
不動産売却時の税金の算出時には、控除できるいくつかの制度があります。
適用の要件は以下のとおりです。
取得費加算の特例を適用するためには、必要な書類を用意して確定申告を行う必要があります。
確定申告を行うことで、最大3,000万円までの特別控除が受けられます。適用の要件は「自分の居住用として、その住宅に実際に住んでいたこと」です。
この特例を受けるためだけに入居したと判断された場合や、別荘としての住まいなどは適用外となります。
適用の要件は以下です。
定められている要件に適用できれば、最大で3,000万円が譲渡所得税から控除されます。
土地や建物の価額が低かった場合や、経費がかかってしまい利益が出なかった場合には確定申告をする必要はありません。
利益(所得)を得た分の申告を行わないと正しい納税ができないため、確定申告は必ず行いましょう。
書類の作成は手間がかかる作業ではありますが、最大3,000万円の控除を受けられる可能性があるので忘れずに行いましょう。
※新型コロナウイルス感染症の影響により提出期間が延長となっている年度もあり、今後も特例として変更となる可能性もあります。
土地の評価は路線価が基準となっていますが、取り巻く環境によって課税時点での価額とズレが生じるケースがあります。不動産の鑑定評価を行うことで節税に繋がる可能性もあるため、鑑定を行うことも検討されるとよいでしょう。
例えば、不動産を相続により取得し、それを売却したとします。売却時の価格が相続税評価額を下回った場合、その売却価格を相続税評価額として申告することも可能なのです。
つまり、売却後に更正の申告をすることにより相続税の還付を受けることができます。
相続税の還付とは、相続税申告書の内容を見直し、相続税の金額を下げられることがわかった場合に差額を返金してもらう手続きとなります。また、申告期限までに分割が確定できず、法定相続分に基づき申告しており、その後に分割が決まった場合等、払いすぎていた相続税分を返金してもらうことをいいます。税務署へ還付申請の手続きを行うことを更正の請求と言い、申立後に税務署は請求された情報を調べます。還付が認められなかった場合は不服申立てをすることも可能です。更正の請求続きに関してはこちらをご確認ください。
「国税通則法第32条」
「相続税法第32条」
相続税還付には期限が定められており、法定申告期限から5年間以内に申請を行うことができます。上記で述べた更正の請求は、期限までに請求すれば間に合うため、相続した不動産を売却後、相続税も見直してみましょう。
税理士法人NCPは、累計相談数が165,000件を超える、相続専門の税理士法人です。弁護士や不動産鑑定士などの専門家が多数在籍しているため、多角的な判断ができます。NCP税理士法人ではオンラインによる相談を行っているので、相続について疑問や不安を解消したい方は、ぜひ利用してみてください。
お問い合わせは「こちら」
控除や特例の制度、確定申告が必要なケースについてもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
相続した不動産を売却するときにかかる税金の種類
不動産売却時にかかる税金には、以下の5つがあります。- 印紙税
- 登録免許税
- 住民税
- 復興特別所得税
- 譲渡所得税
印紙税
印紙税とは、商取引に関わる文書に対して課税される税金のことです。対象となるのは「課税文書」と呼ばれる書類で、具体例としては「売買契約書」や「工事契約の請負書」「領収書」などが該当します。
課税文書の種類によって納める印紙税が異なりますが、不動産売買に関わる税額は以下のとおりです。
契約金額 | 税額 |
---|---|
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 0万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
登録免許税
登録免許税とは、不動産・会社・特許・認可・資格の登記など、さまざまな登録をする際に納める税金のことです。相続した不動産を売却するケースだと、売主(相続した人)から、新しい買主へ所有権を移動する際(負担者については買主側となります)に登録免許税が必要になります。登録免許税の税率については、以下のとおりです。
- 売買時:2.0%
- 相続/法人の合併/共有物の分割:0.4%
- 贈与/交換/収用/競売:2.0%
課税の基準となるものは「不動産の価額(固定資産税評価額)」となり、ここに上記の税率を掛けて登録免許税を算出します。
参照:国税庁「登録免許税の税額表」
住民税
住民税とは「地方税」の1つで、住んでいる市区町村に納める税金です。前年度の1月1日~12月31日までの所得を基準として算出され、翌年に納税します。不動産を売却した際に利益が出た場合、個人の所得の1つと見なされるため、翌年の住民税の金額に影響を与えます。
住民税には「所得割」と「均等割」の2つの算出方法があり、所得割の税率は一律で10%、均等割は市区町村民税が3,500円・道府県民税・都民税が1,500円です(令和5年までの間、それぞれ500円が加算されています)。
復興特別所得税
復興特別所得税とは、2013年の所得税から適用されるようになった税金のことで、東日本大震災の復興のための財源となるものです。住民税と同様に、前年度の1月1日~12月31日までの所得を基準として算出します。不動産売却をした際の利益が出た場合は、税額算出の根拠となる「基準所得税額」に課税され、税率は「基準所得税額×2.1%」です。
譲渡所得に対する税金(譲渡所得)
不動産を売却したとき、発生した利益に対してかかるのが譲渡所得に対する税金です。譲渡所得にかかる税金の額は、不動産の価額ではなく、経費を引いて利益として残った分にのみ課税されます。つまり、売却しても利益が残らなかったり、赤字になったりした場合、確定申告は不要です。譲渡所得税の計算をする際には、その建物や土地の所有期間の長さによって税率が変わります。
- 短期譲渡所得(取得から5年以下):税率30%+住民税9%
- 長期譲渡所得(取得から5年を超える場合):税率:15%+住民税5%
相続不動産の売却時に活用できる3つの特別控除
不動産売却時の税金の算出時には、控除できるいくつかの制度があります。
- 相続後3年10ヶ月以内に売却したときの取得費の特例
- 住んでいる不動産を売却したときの3,000万円特別控除
- 相続した空き家を売却したときの3,000万円特別控除
相続後3年10ヶ月以内に売却したときの取得費の特例
不動産を相続したのち、3年10か月以内に売却が完了した場合には「取得費加算の特例」が受けられます。適用の要件は以下のとおりです。
- 相続や遺贈により財産を取得した者であること
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
取得費加算の特例を適用するためには、必要な書類を用意して確定申告を行う必要があります。
住んでいる不動産を売却したときの3,000万円特別控除
不動産(マイホーム)の売却時に受けられるのは、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。確定申告を行うことで、最大3,000万円までの特別控除が受けられます。適用の要件は「自分の居住用として、その住宅に実際に住んでいたこと」です。
この特例を受けるためだけに入居したと判断された場合や、別荘としての住まいなどは適用外となります。
相続した空き家を売却したときの3,000万円特別控除
相続した空き家の売却時に適用できるのが「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。この制度は期間が限定されており、平成28年4月1日から令和5年12月31日の間に売却することが条件となります。適用の要件は以下です。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
- 相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
- 売却金額が1億円以下であること
定められている要件に適用できれば、最大で3,000万円が譲渡所得税から控除されます。
不動産を売却後に確定申告が必要となるケース
相続した不動産を売却した人のなかで、確定申告が必要なのは以下のケースです。- 譲渡所得にプラスの利益が出た場合
- 特例を適用した場合
譲渡所得に利益が出た場合
相続した不動産売却の際に利益が出た場合は、確定申告が必要です。土地や建物の価額が低かった場合や、経費がかかってしまい利益が出なかった場合には確定申告をする必要はありません。
利益(所得)を得た分の申告を行わないと正しい納税ができないため、確定申告は必ず行いましょう。
特例を適用した場合
税額が控除される特例を適用する場合も、確定申告が必要です。控除を申請する際には、それぞれの特例に合わせた書類の準備と提出が求められます。書類の作成は手間がかかる作業ではありますが、最大3,000万円の控除を受けられる可能性があるので忘れずに行いましょう。
確定申告を行う期間
確定申告を行う期間は、不動産を売却した年の翌年です。2022年1月1日~12月31日までの期間に行った取引は、翌2023年の2月16日~3月15日の間に確定申告書を提出します。※新型コロナウイルス感染症の影響により提出期間が延長となっている年度もあり、今後も特例として変更となる可能性もあります。
確定申告の流れ
確定申告には以下の3つのステップがあります。- 必要書類の準備
- 申告書の作成
- 管轄の税務署への申告書の提出
土地の評価は路線価が基準となっていますが、取り巻く環境によって課税時点での価額とズレが生じるケースがあります。不動産の鑑定評価を行うことで節税に繋がる可能性もあるため、鑑定を行うことも検討されるとよいでしょう。
確定申告前の時価申告による節税対策
相続不動産の売却価格が相続税評価額より低い場合の節税
一般的には不動産の相続税評価額は「売却額>相続税評価額(売却額の80%程度)」の関係となりますが、売却価格が相続税評価額を下回るケースもあります。例えば、不動産を相続により取得し、それを売却したとします。売却時の価格が相続税評価額を下回った場合、その売却価格を相続税評価額として申告することも可能なのです。
つまり、売却後に更正の申告をすることにより相続税の還付を受けることができます。
相続税の還付とは、相続税申告書の内容を見直し、相続税の金額を下げられることがわかった場合に差額を返金してもらう手続きとなります。また、申告期限までに分割が確定できず、法定相続分に基づき申告しており、その後に分割が決まった場合等、払いすぎていた相続税分を返金してもらうことをいいます。税務署へ還付申請の手続きを行うことを更正の請求と言い、申立後に税務署は請求された情報を調べます。還付が認められなかった場合は不服申立てをすることも可能です。更正の請求続きに関してはこちらをご確認ください。
「国税通則法第32条」
「相続税法第32条」
相続税還付には期限が定められており、法定申告期限から5年間以内に申請を行うことができます。上記で述べた更正の請求は、期限までに請求すれば間に合うため、相続した不動産を売却後、相続税も見直してみましょう。
相続不動産の相談は経験豊富な税理士頼んだ方が良い理由
相続税に関する案件の取り扱い数が少ない税理士に依頼すると、市場価格より高い相続評価になっている可能性があります。相続の手続きを行う際には、実際の売買価格と差異が生じないように確かな知識を持った相続案件に詳しい税理士に依頼しましょう。税理士法人NCPは、累計相談数が165,000件を超える、相続専門の税理士法人です。弁護士や不動産鑑定士などの専門家が多数在籍しているため、多角的な判断ができます。NCP税理士法人ではオンラインによる相談を行っているので、相続について疑問や不安を解消したい方は、ぜひ利用してみてください。
お問い合わせは「こちら」
相続した不動産売却にかかる税金に関するよくある質問
相続後3年10ヶ月を超えてしまった場合に適用できる特例はありますか?
ありません。
3年10か月以内であれば「取得費加算の特例」が適用されます。
取得費の特例と居住している不動産売却時の特別控除は併用できますか?
できます。
相続後に居住している場合は併用できますが、空き家の場合は適用外です。
相続した不動産売却はすぐに行った方がいいですか?
今後、居住や使用の予定がない場合には早めの手続きがおすすめです。土地や建物を使わない場合でも所持しているだけで、固定資産税が毎年かかります。