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2022.05.27

国税当局の「路線価否認」判決について

概要

相続人が財産評価基本通達に定める方法により不動産の評価額を算定し、相続税の申告を行ったところ、所轄の税務署長から一部の不動産の評価額は財産評価基本通達に基づき算定したものでは著しく不適当と認められるから、鑑定による評価額とすべきであると更正処分が行われたことに対して、その取り消しを求めたものであるが、その鑑定による評価額は適法であると判断された事案となります。
今回の判決は、どのような点が争点になったのか、解説していきたいと思います。

適用とされた根拠

そもそも相続税法では、財産の評価については、相続又は遺贈により財産を取得した時点における時価により評価するものとされています。
「時価」とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいう、とされています。
しかし、相続税法においては、特定の財産以外については、その評価方法が定められていないことから、実務上、財産評価基本通達に基づき評価するものとされております。
これは、財産の時価を的確に把握することは必ずしも容易なことではないこと等が背景にあり、国税庁は、財産の評価方法について財産評価基本通達を定め、全国統一的な取扱いをしているとされています。
財産評価基本通達によると、土地の評価については、路線価方式又は倍率方式によって評価するとされています。

今回、相続人は、財産評価基本通達に基づき評価したにもかかわらず、所轄の税務署長から不適当とされたのは、財産評価基本通達に基づき評価を行った場合、租税負担の公平を著しく害すると判断されたためとされています。
財産評価基本通達6には、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定められており、この通達に基づき、鑑定による評価を行ったものと考えられます。

一方、財産評価基本通達に基づき評価を行うことは、公知の事実であることから、評価通達に基づく評価額が時価を上回らないからといって、一概に評価通達に基づく評価額を否定するものではないとされていました。否定する場合には、合理的な理由が必要とされ、今回は、実質的な租税負担の公平を著しく害し不当な結果(相続人の税負担を著しく軽減させる)を招くと判断されたことから、評価通達に基づく評価額ではなく、鑑定に基づく評価額が適法であるとされました。

まとめ

財産評価基本通達に基づく評価が否認となり、今後の評価については時価(鑑定による評価)の算定が必要と思われた方も多いと思います。しかし、財産評価基本通達に基づく評価のすべてが否定されたのではなく、その評価方法が租税負担の公平性を侵害する等の合理的な理由がある場合には、否定されることになることが示された判例でした。

【参考・引用】
国税庁「第1章 総則 評価の原則
国税庁「第11章 財産の評価
最高裁判所判例集「令和2(行ヒ)283 相続税更正処分等取消請求事件

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