特定同族会社事業用宅地等の特例とは?適用要件などをわかりやすく解説!

2025.11.20

土地の相続税評価額を減額することのできる小規模宅地等の特例のうち、その土地が同族会社の事業のために利用していた「特定同族会社事業用宅地等」である場合には、相続税評価額を8割減額することができます。
特定同族会社事業用宅地等の特例の適用には各種要件があるため、その要件について詳しく解説します。

特定同族会社事業用宅地等とは?

特定同族会社事業用宅地等とは、同族会社の事業の用に供されていた宅地等のことを指します。
同族会社とは、被相続人、およびその親族や、特別の関係のある個人・法人などが、その同族会社の発行済株式の総数のうち、過半数(50%超)を保有している法人のことです。
なお、判定は相続開始時点で行い、被相続人とその親族(配偶者、6親等内血族、3親等内姻族)を1つのグループとして計算をします。
また、ここでいう「事業」には、不動産貸付事業(賃貸住宅、貸駐車場など)は含まれません。

特定同族会社事業用宅地等の特例の適用要件

持株要件

相続開始直前に被相続人および被相続人の親族(配偶者、6親等内血族、3親等内姻族)その他当該被相続人と特別の関係がある者が同族会社の発行済株式等の50%超を所有していること。

事業要件

相続開始直前にその宅地等が同族会社の事業の用に供されていること。この場合の事業とは、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐輪場業並びに準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの)を除きます。なお、同族会社が不動産の賃貸をせずに、管理のみを行っている場合は、特定同族会社事業用宅地等の特例の適用が可能となります。

法人役員要件

相続税の申告期限において、宅地等の取得者が同族会社の役員(取締役、執行役、監査役、理事、監事など)であること。ただし株主である必要はありません。
また、相続開始時に同族会社の役員でなくても、相続開始後から相続税の申告期限までに、役員に就任していれば要件を満たします。

保有継続要件

宅地等を取得した相続人が相続開始時から申告期限まで引き続き保有していること。
申告期限までに宅地等を売却してしまうと、保有継続要件を満たしません。

限度面積と減額割合

限度面積と減額割合は以下の通りです。

限度面積:400㎡
減額割合:80%

なお、戸建て住宅の平均面積は100㎡~125㎡となるため、限度面積を超えることは少ないですが、仮に超えても、減額割合が0になるわけではありません。面積が400㎡を超える宅地等の場合は、そのうちの400㎡までの部分に関して80%の減額が可能です。

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申告の際の添付書類

特定同族会社事業用宅地等の特例を適用する際は、相続開始から10か月以内に遺産分割協議書を完了させなければなりません。また、たとえ適用した結果、納税が発生しない場合でも、申告期限内での相続税申告書の提出が必要となります。
なお、相続税申告では以下の書類が必要です。

  • 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
  • 相続人が誰なのかを明らかにするための戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議で押印したもの)
  • 被相続人および被相続人の親族その他被相続人と特別の関係がある者が特定同族会社の発行済株式等を50%超所有していたことを証明する書類(法人が証明したものに限る)

その他に、申告書の提出時には相続人のマイナンバー(もしくはマイナンバーカードの写し)や身元確認書類が必要になります。

特例が適用できないケース

特定同族会社事業用宅地等の特例は、以下の2つのケースでは、適用できません。

1.建物を無償もしくは相場よりも低い賃料で貸している場合

特定同族会社事業用宅地等の特例は、土地に対する相続税を軽減し、賃料によって生活を支えている相続人の生活を保障するという趣旨で設けられている特例措置です。無償もしくは相場よりも低い賃料で貸していたのであれば、その土地は相続人の生活を支えているとはいえないため、特例の対象にはなりません。

2.土地の上に建物や構築物がない場合

特定同族会社事業用宅地等の特例を適用するためには、特例の対象となる土地の上に建物や構築物(例えば、事務所や倉庫など)があることも要件となるため、青空駐車場や資材置き場など建物や構築物がない土地については、特例の対象とはなりません。

他の特例との併用について

特定同族会社事業用宅地等の特例は、これまでご紹介してきた特定居住用宅地等や貸付事業用宅地等、特定事業用宅地等の各特例と併用することができます。複数の土地をお持ちの場合に役立つため、簡単にご紹介します。

1.貸付事業用宅地等がない場合

貸付事業用宅地等がない場合は、それぞれの特例の上限面積まで適用できます。ただし、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は合わせて400㎡が上限面積となるため注意が必要です。
具体例として、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等の3つの特例を併用する場合を考えてみます。
この場合、特定居住用宅地等の限度面積は330㎡、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の限度面積は合わせて400㎡となり、減額割合はすべて80%となるため、合計730㎡まで80%の減額が適用できます。

2.貸付事業用宅地等がある場合

貸付事業用宅地等の特例と併用する場合は、それぞれの特例の上限まで適用できるわけではないため、注意が必要です。

特定居住用宅地等を①、貸付事業用宅地等を②、特定事業用宅地等を③、特定同族会社事業用宅地等を④とした場合、以下の算式で計算される部分の面積の範囲で適用できます。

(③+④)×200/400+①×200/330+②≦200㎡

特定同族会社事業用宅地等に関するよくある質問

被相続人が会社の代表取締役でなくても適用できますか?

適用できます。
特定同族会社事業宅地等の特例の要件には、被相続人が役員であることは含まれていないため、被相続人が役員でない法人でも問題ありません。
ただし、宅地等を相続した親族は、相続税の申告期限までにその法人の役員である必要があります。

会社を売却した場合、特例はどうなりますか?

申告期限前に会社を売却した場合については、特例の適用を受けることができません。
特定同族会社事業用宅地等に該当するためには、申告期限まで、その法人の事業の用に供していなければなりません。

3年間の継続要件に違反するとどうなりますか?

特定同族会社事業用宅地等については、3年間の継続要件はありません。そのため、相続開始前3年以内に新たに事業を始めた場合でも特例の適用を受けることができます。

被相続人が宅地等を会社に無償で貸している場合は適用できますか?

適用できません。
相当の対価による貸付けをしている場合でなければ、適用要件を満たさないため、無償で貸している場合は、特定同族会社事業用宅地等に該当しません。

まとめ

今回は、小規模宅地等の特例の対象となる「特定同族会社事業用宅地等」について、適用要件や必要書類など、詳しく解説しました。
特定居住用宅地等の特例、貸付事業用宅地等の特例とは異なり、あまり身近ではないかもしれませんが、適用できれば相続税の負担を大幅に減少できる可能性があります。
税理士法人NCPでは、小規模宅地等の特例について、豊富な知識、申告実績をもった専門家が在籍しているため、お気軽にお問い合わせください。

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