【2026年度税制改正大綱】相続税・贈与税に関する改正項目と今後の影響について

2026.03.03

2025年12月末に閣議決定した2026年度税制改正大綱では、さまざまな評価項目の改定が行われ、相続税や贈与税に関する項目も見直されました。今後資産の相続や贈与を検討している場合、税制改正の内容を理解しておくことが重要です。本記事では、改正項目の内容や、注意点、今後の見通しなどを解説します。

2026年度税制改正大綱の概要

2026年度税制改正大網が、2025年(令和7年)12月19日に公表され、12月26日に閣議決定されました。
近年の諸課題に対応するべく、今回の改定は例年よりも改定項目が多く、改正内容も多岐にわたるものとなりました。相続税・贈与税に関する項目においては、主に格差の固定化の防止、税制の公平性確保の観点から改正が行われています。特に不動産評価の市場価格と相続税評価額の乖離を利用した過度な租税回避事例が散見される中、評価の適正化及び課税の公平性を図るため、貸付用不動産等の評価方法の見直しが盛り込まれています。
なお、税制改正大綱は税制改正案の概要を示すものであり、国会での審議・可決後に法案として成立します。そのため、今後の国会の審議等により本記載とは異なる内容が制定される可能性もありますのでご留意ください。

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【改正内容①】貸付用不動産の評価方法の見直し

1. 改正の概要:取得後「5年以内」の評価引き上げ

被相続人(贈与者)が亡くなる(贈与する)前5年以内に、対価を伴う取引により取得または新築した貸付用不動産については、被相続人(贈与者)が亡くなった(贈与した)時の通常の取引価額に相当する金額で評価することになりました。

2. 改正の背景:評価額の乖離を利用した節税対策への対応

貸付用不動産は、一般的に常に満室で人気な物件であるほど市場価格が高くなる一方、相続税評価額が低くなる仕組みとなっていました。この仕組みを利用して、相続の直前に多額の借り入れをして高額の賃貸マンションを購入し、意図的に納税額を圧縮するケースが多く発生していました。これに対処する見直しとして、取得年数の浅い貸付用不動産については実際の取引価格に近い評価額が用いられることになりました。

3. 具体的な評価額の算出方法

「通常の取引価額に相当する金額」については、課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80(80%)相当額によって評価します。
ただし、取得から5年を超える不動産については、従来通りの評価方法が適用されます。
この改正は、2027年(令和9年)1月1日以後に相続・贈与によって取得する財産の評価に適用されます。改正通達日の5年以上前から所有する土地に新築した(同日において建築中の)家屋には適用されません。

【改正内容②】不動産小口化商品の評価方法の見直し

1. 改正の概要:取得時期を問わず「時価評価」へ

不動産特定共同事業契約または信託受益権に係る金融商品取引契約の不動産小口化商品については、取得時期に関わらず、亡くなった(贈与した)時における通常の取引価額に相当する金額によって評価することになりました。
不動産小口化商品は、小口化された高額な不動産を口数単位で保有する投資商品で、節税効果が大きく得られると近年人気の商品となっていました。市場価格と通達評価額の乖離が5倍を超えることもあり、今回の見直しで実際の取引価格に近い評価額が用いられることになりました。

「通常の取引価額に相当する金額」とは、課税上の弊害がない限り、次に挙げる3つの価格を参考に求めた金額によって評価します。

2. 通常の取引価額を算定する3つの基準

  • 出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等
  • 事業者等が把握している適正な売買実例価格
  • 定期報告書等に記載された不動産の価格等

ただし、上記に該当しない場合には【改正内容①】の貸付用不動産の評価に準じて評価します。
この改正は、2027年(令和9年)1月1日以後に相続・贈与により取得をする財産の評価に適用されます。

【改正内容③】教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の終了

1. 改正の概要:2026年(令和8年)3月末での制度終了

教育資金の一括贈与制度とは、祖父母や父母から子や孫など直系尊属へ教育資金を一括贈与する場合、贈与額の最大1,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。この制度は、2026年(令和8年)3月31日をもって終了することになりました。

2. 廃止の背景:社会情勢の変化と格差への配慮

教育資金の一括贈与制度は、非常に利用価値のある制度ですが、その手続きや要件の複雑さや格差固定化の懸念、教育費の無償化や負担軽減の進展、NISAの拡充等を踏まえ、延長しないことになりました。
ただし、制度の終了前に拠出された金銭等については、引き続き非課税措置が適用されます。
制度終了後の教育資金の贈与は通常の贈与税のルールが適用されるため、都度贈与や暦年贈与(年間110万円の基礎控除枠内の贈与)を検討する必要があります。

【改正内容④】事業承継税制・特例承継計画等の提出期限の延長

各種承継・納税猶予制度の期限が以下の通り延長されました。

  1. 個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度:個人事業承継計画の提出期限を2年6カ月延長
  2. 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度:特例承継計画の提出期限を1年6カ月延長
  3. 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等:適用期限を3年延長
  4. 農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度:利子税の全額免除措置の適用期限を5年延長
  1. いずれも事業者が経営を円滑に承継・継続することを前提として設けられた制度です。 (1)と(2)は、提出期限は延長されたものの、適用期限は延長されない見込みであるため、適用を受ける可能性がある場合は、早めに承継計画の策定に着手すると良いでしょう。

出典:財務省 令和8年度税制改正の大綱

2026年度税制改正大綱がもたらす影響と今後の見通し

貸付用不動産については、取得から5年以内の場合は大きな節税効果が見込めなくなりました。取得後5年を経過したものは従来の評価方法のままとなるため、今後は貸付不動産の取得等については早めの検討が重要になります。

不動産小口化商品については、取得時期に関わらず大きな節税効果が見込めなくなります。これから購入するものだけでなく、既に保有している商品についても、2027年(令和9年)1月1日以降は新制度が適用されるため、それまでに贈与や売却をするなど運用を検討する必要があります。

今後、相続税対策を企図した駆け込みの贈与なども考えられますが、高額な贈与の場合、財産評価基本通達6項により否認されるリスクもあります。また、贈与済みの不動産については相続時に小規模宅地等の特例を使えないため、慎重に検討することが大切です。

また、今回の税制改正により、実際の不動産価値と相続税評価額の乖離による実質的な租税回避が是正され、租税負担の公平性が保たれつつあります。過度な節税効果を謳う商品には、今後も改正の対象となることが見込まれるため、常に最新の税制動向を注視する必要があります。

2026年税制改正大綱の相続税・贈与税に関するよくある質問

今後貸付用不動産の購入は節税対策にはならないのでしょうか

財産を現金で保有するよりも、不動産として保有する方が相続税評価額を抑えられるため、節税対策になります。今回の税制改正により、評価額は実際の取引価格に近い金額で算出されますが、不動産小口化商品を除けば、以前として取引価額の8割程度となります。そのため、現金や預金で財産を保有するよりも、不動産を保有する方が相続税の計算において有利です。
また、相続開始の直前まで不動産貸付事業に使用されていた宅地等は、一定の要件を満たす場合に「小規模宅地等の特例」を使用できます。最大200㎡までの部分について、さらに評価額を減額することが可能です。

詳しくは、「アパート経営が相続税対策におすすめの理由!節税の仕組みやメリット・デメリットを解説」をご参照ください。

教育資金を一括贈与すると税金を払わないといけないのでしょうか

2026年(令和8年)3月31日以降に教育資金を一括贈与する場合、これまでのような「最大1,500万円までの非課税特例制度」は利用できなくなります。特例制度終了後は、原則として年間110万円を超えた分に対して、贈与税が課税されます。そのため、年間の贈与を基礎控除額の枠である110万円以内におさめ、数年にわたり計画的に贈与を行うことで、非課税のまま財産を贈与することができます。
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置終了後にも活用できる生前対策についての詳細は「教育資金の一括贈与はいつまで?非課税制度終了後の対応についても解説」をご参照ください。

まとめ

今回は、2026年度税制改正大綱の相続税・贈与税に関する改正項目と今後の影響について解説しました。財産の種類によって評価額の計算の仕方は異なります。相続税の試算、それに応じた節税対策については、相続専門の税理士に相談することをおすすめします。
税理士法人NCPでは相続対策に精通した税理士が在籍しており、「士業たるや究極のサービス業なり」を肝に銘じ、親切・丁寧な対応を心掛け、お客様に安心してお手続きを進めていただけるようお手伝いをしています。ぜひ税理士法人NCPにご相談ください。

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