遺言書の種類や必要書類は?自分で作成するときの注意を詳しく解説

2022.12.22

遺言とは?

遺言とは、被相続人の最期の遺志といえます。遺言を作成しておくことにより、自分の財産を、誰に、どのような形で残すかということについて、被相続人自身の意思を反映することができるのです。

遺言書があれば、原則としてその内容のとおりに遺産を分割することになっているので、相続人間のトラブルが起こりにくくなり、相続財産の換金や売却などがスムーズにできるので、相続人は相続税を支払いやすくなります。
また、遺言書を作成すれば、遺産を法定相続人だけでなく自分が財産をあげたいと思う人に残すことや寄付をすることもできるのです。

遺言の種類

遺言書(普通方式遺言)には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類の形式があります。

自筆証書遺言

代筆なく全文を自筆で書き上げる遺言書のことです。遺言書の全文と日付、氏名を自書し押印すれば良いので、紙とペンと印鑑があれば遺言者が自分1人で作成できます。

公正証書遺言

法律の専門家である公証人に依頼して作成する遺言書です。証人2人以上の立ち合いの下で遺言書に書きたい内容を公証人に口述し、公証人がそれを書面に起こして作成する形式です。

秘密証書遺言

遺言の内容を誰にも公開せず、秘密にしたまま、公証人及び証人2人以上に遺言者本人が書いたものであることを証明してもらう形式です。自筆証書とは異なり、本人が署名・捺印をすればパソコンや代筆でも認められます。

遺言のメリット、デメリット

【メリット・デメリット】
遺言書 メリット デメリット
自筆証書遺言
  • 遺言書の存在と内容を秘密にできる
  • いつでもどこでも作成できる
  • 費用がかからない
  • 内容が不明確になる可能性があり、無効となる恐れがある
  • 紛失や偽造の可能性がある
  • 自署・署名ができない場合は作成できない
  • 家裁の検認手続きが必要
公正証書遺言
  • 遺言の内容が明確になる
  • 原本は公証役場で保管されるため、紛失や偽造の心配がない
  • 遺言書の検認が不要
  • 遺言の存在を秘密にできない
  • 公証人に依頼する手続きと費用が発生する
  • 遺言書の作成手続きが煩雑である
  • 作成するまで時間がかかる
秘密証書遺言
  • 遺言の内容を秘密にできる
  • 紛失や偽造の危険性が自筆証書遺言より低い
  • 本文をパソコンや、代筆で作成できる
  • 署名ができない場合は作成できない
  • 公証人に依頼する手続きと費用が発生する
  • 遺言書自体は公証されていないから争いが起きる可能性がある
  • 家裁の検認手続きが必要

遺言の費用

遺言を作成するための費用はそれぞれの遺言でどのくらいかかるのでしょうか。
  • 自筆証書遺言 →自筆証書遺言は自分で作成するので費用はかかりません。
  • 公正証書遺言 →相続させる財産の価格によって、手数料が変わります。下記表を参照してください。
[公証人手数料令第9条別表]
遺産の価格 金額
100万円以下 5,000円
100万円超200万円以下 7,000円
200万円超500万円以下 11,000円
500万円超1,000万円以下 17,000円
1,000万円超3,000万円以下 23,000円
3,000万円超5,000万円以下 29,000円
5,000万円超1億円以下 43,000円
1億円超3億円以下 43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円を加算した額
3億円超10億円以下 95,000円+超過額5,000万円ごとに11,000円を加算した額
10億円超 249,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円を加算した額
※相続財産が1億円以下の場合は、11,000円を加算した金額
  • 秘密証書遺言 秘密証書遺言も公正証書遺言と同様に、公証人が関与するため公証人への手数料が発生します。
    ただ、秘密証書遺言については、遺言内容に公証人が関与しないため、公証人への手数料は一律11,000円となります。

遺言書作成のための必要書類

必要書類については、遺言書の種類によって異なり、次のものが必要になります。
  • 自筆証書遺言と秘密証書遺言 →印鑑登録証明書、印鑑
  • ※遺言書を作成する際には、できる限り十分な資料を揃えておくほうが安全ですが、お客様のお持ちの資料で正確な住所、氏名、財産等が分かれば、自筆証書遺言と秘密証書遺言については下記の表にまとめた資料を収集頂く必要はございません。
  • 公正証書遺言 →下記の表にまとめたものをご参照ください。
<例示>
公正遺言書作成にかかる必要書類
1 遺言者 印鑑登録証明書、戸籍謄本
2 受遺者 住民票、戸籍謄本
3 立会証人 住民票または免許証など身分を証明する資料
4 遺言執行者 住民票または免許証など身分を証明する資料
5 不動産 不動産登記簿謄本、または登記事項証明書
固定資産評価証明書、または固定資産税の納税通知書
6 預貯金 通帳のコピー、または金融機関発行の残高証明書
7 生命保険 保険証書、解約返戻金証明書
8 自動車 車検証、査定書
9 動産 貴金属・宝石類・美術品・骨董品などについては、鑑定書
10 債権 借用書などの債権を証する資料、株式の配当報告書、貸金庫契約書
11 債務 金銭消費貸借契約書、返済予定表
12 その他 必要に応じて、相続関係説明図、財産目録、診断書、など
※印鑑登録証明書の有効期限は、3ヶ月以内である必要があります。

遺言を自分で作成するときの注意点

自筆証書遺言は、遺言者が紙に自ら遺言の内容の全文を手書きし、かつ、日付及び氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成します。
なお、平成31年1月からは、民法の改正により、遺言書にパソコン等で作成した財産目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産登記事項証明書等を財産目録として添付したりすることが認められるようになりました。この場合、これらの財産目録には、遺言者が目録の用紙全てに署名、押印しなければなりません。
添付する財産目録は、手書きでなくてもよくなりましたが、財産目録以外の遺言書の全文は遺言者が手書きしなければなりません。これをパソコン等で記載したり、第三者に記載してもらったりした場合には、遺言が無効になります。

詳しくは法務省HPをご確認ください。

自筆証書遺言は内容が簡単な場合はともかく、そうでない場合は法律的に見て不備な内容になってしまう危険性があり、後にトラブルの種を残したり、無効になってしまったりする場合もあります。
また自筆証書遺言で誤りを訂正する場合、遺言者がその訂正した箇所を指示し、これを訂正した旨を付記して、そこにも署名を行い、訂正した箇所に押印をしなければなりません。
つまり、自筆遺言書を訂正する場合、遺言者は訂正・変更を行った箇所について以下が必要となります。
  1. 訂正箇所を示すこと
  2. 訂正・変更したことを書き足すこと
  3. 訂正・変更箇所に署名を行うこと
  4. 訂正・変更場所に押印すること
上記の方式に従わない場合、訂正・変更が無効になってしまうこともあります。
遺言書を自宅で保管していた場合、紛失あるいは発見した者が自分に不利なことが書いてあると思ったときに破棄をしたり、隠匿や改ざんをしたりしてしまう危険性がないとはいえません。
自筆証書遺言書は、法務局で保管できる自筆遺言保管制度があります。紛失や亡失、遺言書の破棄・改ざん等を防ぐことも可能です。

詳しくは法務省HPをご確認ください。

遺言書の作成のタイミング

大切な家族のために、万が一のことを想定し自身が元気なうちに作成しておくことをおすすめします。最近では若い方でも、海外旅行に行く前などに遺言書を作成しておく例も増えてきています。満15歳以上であれば、遺言書を作成することができますが、遺言能力が備わっていないといけません。
例えば、認知症などをわずらい、判断能力が低下した人は、遺言能力がないとされ、その人が書いた遺言が無効となる場合もあります。遺言は、後に残される家族に対する最大の思いやりなのです。できるだけ早く取り組むと良いでしょう。

遺言書を自分で作成する際は専門家に相談するのがおすすめ

遺言・遺言書には、どう分けるかという民法の部分と、その結果、誰がいくら・どのように相続税を納めるかという部分の両方を考慮することが欠かせません。さらに、相続発生後、相続税の申告をしなければなりません。
自分の希望が法律上も問題がないものなのか、相続に詳しい専門家のチェックを受けることをおすすめします。

遺言に関するよくある質問

遺言書を自分で作成した場合、もし見つけられなかったらどうなりますか?

遺言書が見つからない場合には、法定相続人が被相続人の遺産を相続します。

ご自身で書かれた遺言書(自筆証書遺言)の場合、公正証書遺言とは異なり見つけるのは少し困難となります。遺産分割協議が成立した後に遺言書が出てきた場合は、その遺言書が法律的に有効なものであれば、原則として既にした遺産分割協議は無効になり、新たに遺産分割協議を行う必要があります。

なお、現在では、自筆証書遺言を法務局で保管してくれる、自筆証書遺言書保管制度という制度(法務省HP)がありますので、遺言者がこちらの制度を利用していれば、遺言書が見つからないという事態は避けることができるでしょう。


遺言の内容の変更・取り消しはいつでもできますか?

遺言は、人の最終意思を保護しようという制度ですから、取り消しや変更は、いつでも、何回でもできます。一度遺言書を作成しても、状況が変化し、内容の変更や取り消しをしたくなることもあるでしょう。特に、結婚・離婚・再婚、子どもの誕生などで法定相続人に変化があった場合には遺言書の見直しが必要です。
ただし、変更や取り消しは新たに作成する遺言の方式に従って、適切になされなければなりません。方式を誤ると、遺言が無効になったりしますので、専門家に依頼するのが良いでしょう。


遺言を作成していなかった場合の相続はどうなりますか?

遺言がないときは、民法が相続人の相続分を定めているので、法定相続に従って遺産を分けることになります。
民法では、例えば「子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする」というように、抽象的に相続分の割合を定めているだけですから、遺産の帰属を具体的に決めるために、相続人全員で遺産分割の協議をする必要があります。

まとめ

遺言は被相続人の最後の意思表示です。遺言には財産の分け方を示すだけでなく、そこに至った遺言者の動機や心情も記すことができます。遺言者の最後のメッセージとなって相続人の心に届くでしょう。財産の分け方に多少の不平等があったとしても「そういう理由なら」と相続人が納得するケースも多いようです。
なお、遺言があれば遺言者が好きなように財産を分けられるとはいえ、法定相続人には遺留分といえって遺産の最低保証分があります。これを侵害していると争いの種になりがちなので、そこだけは注意して分け方を考えたほうが無難でしょう。

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